2010.5. 弁天様の恵み(The Blessing of Benten)

最終更新日: 30/04/2010 // 二週間前の週末、第9回ノルウェー・フレンドシップ・ヨットレースに出席するため江の島を訪れました。この美しい島を再び訪れ、日本の人々がノルウェーの人々と同じように抱いている航海への情熱をたたえることができ、大変うれしく思いました。東京から電車で江の島の最寄り駅まではあっという間で、とても快適な旅でした。

江の島に渡る橋を歩きながら私は「人間であり車でなくてよかった。更に、車に乗った人間でなくてよかった」と考えていました。その日、江の島に向かう橋の上には、おびただしい数の車が列を作っていました。いっこうに前に進まない渋滞にじっと耐えながら、ドライバーたちはたとえ橋を渡り切ったところでどこに駐車したらよいのだろうと心配していたことでしょう。私はそんな車を足早に歩いて追い越し、数日間続いた寒さと雨の後に訪れた陽気と暖かい潮風を満喫していました。私は幸運の女神、弁天様のお恵みを強く感じました。弁天様は私を江の島に歓迎してくれましたが、車のことは必ずしも歓迎しなかったのでしょう。

また、私が平和な現代のノルウェー大使であることの喜びを感じていました。735年前、モンゴルは当時北条時頼が執権を務める鎌倉幕府の将軍のもとに使者を送りました。1275年時頼の息子である北条時宗の命令により、まさにこの江の島の浜辺でモンゴルの使者たちは打ち首にされたと伝えられています。外交官としてはどんなときでも、侵略をもくろむ敵であるより、平和的使命を担った友人でありたいものです。

私は一年前にも平和的使命を持って江の島を訪れていました。ノルウェー・フレンドシップ・ヨットレース第8回大会に出席するためです。その際は日本のヨット愛好家の方々と楽しく交流させていただき、海老根藤沢市長ともお会いすることができました。

今年のノルウェー・フレンドシップ・ヨットレースには、過去最多となる幅広い年齢層のヨット愛好家が参加しました。参加者は皆、海上での友好的なレースを楽しみ、さらにレース後、陸に戻ってからのパーティーも楽しみました。ヨットの帆柱や江の島ヨットクラブのクラブハウスには、ノルウェーの国旗がはためいていました。これらの国旗を目にして、私は5月17日のナショナル・デー(ノルウェーの憲法記念日)を一足先に祝った気分になりました。

ノルウェー王国ハーラル国王陛下は、46年前の皇太子時代、東京オリンピックのヨット競技に参加するため、この美しい江の島の地を訪問されました。その際は日本の皇太子殿下(現天皇陛下)がレースを観戦されました。2001年の日本への公式訪問の際、ハーラル国王陛下は天皇陛下のご案内で江の島を再訪されました。以来両国の王室・皇室に敬意を表して、ノルウェーフレンドシップヨットレースが江の島ヨットクラブで開催されるようになりました。素晴らしい伝統として今後も続いていくことを願っています。

その日の夕方近く、ヨットレースが終わり橋を渡っているときは、私はもう車には注意を向けませんでした。その代わり、何度も立ち止まっては振り返り、美しい島を眺めました。龍神様が「さようなら。また来てください」と親しみをこめて私に呼びかけている声さえ聞こえるようでした。龍神様とは江の島の洞窟に住み、その昔弁天様に島を守るよう説き伏せられた神様です。私は江の島ヨットクラブで両国の友好関係を新たにできたことをうれしく思いました。特に海老根藤沢市長は、二度までもこのノルウェー大使が無事に、頭を付けたまま島を去ることを許して下さり、皆様に暖かく迎えていただきました。これもやはり弁天様のお恵みであると感謝しなければなりません。

美しく神聖な江の島を眺めながら、私はすでに来年のノルウェー・フレンドシップ・ヨットレースを楽しみにしていました。第10回の節目となる次回は特別な記念の大会にしなければなりません。

アルネ・ウォルター
2010.4.30.


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