この日には、アイスクリームやワッフル、ホットドッグなど、子どもたちの大好物を用意し大人も一緒にお祝いの食事を楽しみます。
私たちノルウェー人は春になると巡ってくるナショナルデーを、長くて厳しい冬を経て自然が新たに息を吹き返し、人々が夏の訪れを楽しみに待つなかで祝います。しかし、愛国の誇りと充実感あふれるこの春の年中行事においても、私たちが世界中の恵まれない人々のことを忘れることはありません。世界には、貧困や不正義の広がり、武装紛争による殺戮と破壊、繰り返し襲ってくる自然災害などに苦しんでいる人が多数います。
今年も東京のノルウェー王国大使館でナショナルデーの集いを行ないました。しかし、今年の集まりは、例年のものとは違ったものとなりました。今年は恒例のワッフルやホットドッグ、アイスクリームに加え、東北地方産の食材を使って作られた料理も並びました。私たちが今暮らしているこの日本という国とそこに住む人々、私たちが尊敬する大切な友人を襲った大震災のことを思う集いとなりました。
今こそ、絆を深めるべきとき
東日本大震災を経験した今こそ、ノルウェーと日本の国家間や市民間の絆を更に深めていかねばなりません。ノルウェーとその国民は、日本に支援の手を差し出すべきときです。被災直後の短期的な災害救済だけではなく、より長期的な復興の取り組みにおいても、日本の人々や政府と協力していくべきときなのです。
3月11日に日本で大震災が発生した直後に、ノルウェーのハーラル5世国王は天皇陛下にお見舞い状を送りました。国王と天皇陛下の間には深いご縁があります。国王は、まだ皇太子だった1964年に夏季オリンピックのセーリング競技に出場するために日本を訪問し、やはり当時まだ皇太子であられた天皇陛下と会いました。そして2001年に国王として再来日しています。その後ノルウェーの近代国家としての独立100周年に当たる2005年には、天皇皇后両陛下が返礼としてノルウェーをご訪問くださいました。
ノルウェーのストルテンベルグ首相も、犠牲者への哀悼の意を表するメッセージを菅首相に直ちに送り、ノルウェーとしてできる限りの支援を行うことを伝えました。実はストルテンベルグ首相は、大震災の日から4日後の3月15日に、多くのノルウェーのビジネス界の代表者らとともに来日する予定でした。科学技術や水産業、海運、エネルギーや環境の分野で両国の関係を更に深め、新たな可能性を探ることを目的としたこの訪問は、大震災の甚大な被害を考慮して延期されました。ですがまた近い将来、新たな目的を設定して実施されることになると思います。その他の閣僚も、日本の各省の閣僚の皆さまに同様のお見舞い状をお送りしています。
数週間前、衆参両院議長とお会いし、ノルウェーの国会議員を代表して、被災した方々に哀悼とお見舞いの意を表するノルウェー国会議長からの書状をお渡しすることができました。またノルウェー国会外交・防衛常任委員会による日本への有意義な訪問の成功を受けて、保健福祉常任委員会もこの夏以降に日本を訪問することを計画しています。
被災地に思いを寄せて
こうした政治面の動きは、ノルウェーだけに限りません。世界中が日本に思いを寄せているのです。豊かな国も貧しい国も、日本の隣国も遠国も、二国間関係に加え、国連やその他の機関による核軍縮や持続可能な開発のための国際協調の要としても、日本を高く評価しています。日本は長期的な国際開発援助や短期の災害救済において、これまで積極的に寛大な支援を行なってきました。今まで日本が世界を支援してきたのですから、今度は世界が日本に恩返しをする番です。国際社会の日本に対する思いや支援の輪が、ノルウェーを含め世界の至るところで力強く深く広がっています。
その他多くの諸国と同様に、ノルウェーも津波に襲われた地域の支援に向けて直ちに探索救助隊の派遣を申し出ました。またノルウェーの災害救済の専門家たちは、国連、EU、国際赤十字が日本に派遣した被災地被害評価チームに加わり、日本の政府や組織と協議しながら、各救援作業に向けた準備を整えました。ノルウェーには、その他の面でも日本を支援する用意があります。
支援の輪の広がり
ノルウェー国内では、日本への支援に向けたコンサートが行われるなど、支援の輪が自然発生的に広がりました。こうしたコンサートの一つには皇太子も参加されています。またロシアで行われたバイアスロンの世界選手権で優勝した選手たちは、その賞金の全額を日本に寄付し、選手の所属する競技連盟も合わせて同額を寄付しました。日本への支援は今様々なかたちでノルウェー各地で行なわれています。
大震災から最初の数週間は、国際救済組織のノルウェー支部(赤十字、セーブザチルドレン、教会の救済基金)が、日本を支援するためにノルウェー人から集めた義援金(日本円で2億5千万円以上)を、地元のニーズに合わせて最も効果的に義援金を使えるようにと日本の各支部宛てに送りました。また今から2週間前には、本や筆記用具などをいれた5,500個のランドセルがセーブザチルドレンから宮城県石巻市の被災者の皆さんに届けられるなど、ノルウェーが協力する使途指定の支援も進んでいます。
ノルウェーの企業であるノルメカ(Normeca)は、岩手県に2つの半恒久的病院施設を設営しています。また、再生可能エネルギーや環境の分野におけるノルウェーの最先端の技術と知識を駆使して、復興の取り組みに大きな貢献をなしえるものと思います。
沿岸地域の課題
ノルウェーの面積は日本とほぼ同じですが、人口はわずか490万人と、日本よりもはるかに少なくなっています。ユーラシア大陸の日本と反対側の端にあるノルウェーにも、漁業を主産業とする集落の点在する沿岸地域が広がっています。海に面した国に住む私たちは、海には豊富な資源があり多くの恵みをもたらしてくれることを知っていますが、一方で海では多くの命がこれまでに失われているため、海の力を侮ってはいけないこともわかっています。過去の津波は、海がいかに残酷か、その破壊力を示しています。沿岸地域の住民は、誰にもまして津波の威力がよくわかるので、日本の沿岸地域の被災者の皆さんに特に強い思いを寄せています。
海運業、漁業、水産物の安全性、その他の海洋関連の活動は、ノルウェーと日本の重要な協力分野です。こうした分野は東北地域における日本政府の復興努力においても重要であり、ノルウェーはこの分野において十分な経験とノウハウ、専門知識を有しています。ノルウェーの漁業・沿岸問題相は、ストルテンベルグ首相が3月に予定していた日本訪問に同行するはずでした。同相は早く日本を訪問したいと考えており、漁業協力の推進だけでなく、被災した沿岸地域の復興の課題にも関心を寄せています。同じ沿岸国として、沿岸地域固有の課題が理解でき、共有すべき経験があるのです。
世界共通の懸念
自然災害は国境を超え、宗教や政治の制度を無視して発生します。自然災害に対して人類は一つなのです。自然災害の脅威に対して、国際社会、各国政府、NGO、一般市民は常に互いに助け合う態勢を整えておくべきです。
神戸の大震災から10年となる2005年1月に、国連防災世界会議が日本主催で行なわれ、「兵庫行動枠組2005-2015」が採択されました。この国際防災の枠組みによって、防災措置の重要性に対する認識が明らかに高まりました。ノルウェーと日本はこの会議でも緊密に協力しており、ジュネーブではちょうど先週、第3回防災グローバル・プラットフォーム会合が開催されたところです。
大震災後に日本が行なってきたこと、そして被災地の復興に向けて今後も長期的に実施していかねばならない取り組みは、貴重な経験をもたらすでしょう。再び災害が世界のどこかで発生し、救済、復興に対する国際的な経験や取り組み、支援が求められた際に、日本が今回の大震災の経験を伝えることを各国は高く評価するでしょう。こうした災害の事態に際し、ノルウェーは日本その他の諸国と今後も協力し、支援を行なっていきたいと考えています。
アルネ・ウォルター
2011年5月17日・東京
(出典:ジャパン・タイムズ 2011年5月17日)