ワークショップでノルウェー側代表団の団長を務めたJøran Moenオスロ大学教授は「観測ロケットによる研究における画期的な出来事」と語りました。
またウォルター大使は挨拶のなかで「ノルウェー・日本科学技術協力協定の枠組みの中で、両国間の研究・科学協力が緊密に行われている。今後、気候変動のような複雑なプロセスをより深く理解するための研究において、今回のワークショップは重要な役割を果たす」と述べました。
自然科学分野におけるノルウェーと日本両国間の協力には長い歴史があります。遡ること約100年、物理学者で東京帝国大学理科大学(現東京大学理学部)助教授だった寺田寅彦が、ノルウェーのクリスチャニア大学(現オスロ大学)のクリスチャン・ビルケラン教授を訪ねています。
2007年、ノルウェー宇宙センターと宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究本部(ISAS)との間で、基本合意書が交わされました。東京で開催された調印式には、ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ外相も同席しました。この基本合意書では、以下4点の主要協力分野が挙げられています:
(1)極域大気研究のための科学観測ロケットの利用促進
(2)極域大気に関する日本・ノルウェー両国の観測ロケット打ち上げプログラムの連携を図る
(3)観測ロケットの打ち上げから得られたデータの科学的分析における協力を継続・強化し、こうした研究プロジェクトの科学的成果を高める
(4)高等教育と科学・技術教育訓練において観測ロケットが提供するユニークな可能性を開拓する
今回のワークショップは、この基本合意を受けて具体的なプロジェクトを特定することを主目的として行なわれました。
ワークショップでは、両国の研究者が将来に向けて協力の対象となる可能性のある研究テーマが提案されました。そして、ノルウェー宇宙センターとJAXAは、(1)気候、(2)環境、(3)宇宙天気の3分野で協力を強化することで合意しました。
ノルウェーの研究ロケットは現在1機約1億5000万円かかります。ノルウェーと日本の観測ロケット打ち上げ計画の連携を図ることは、研究費用の側面からも両国の研究態勢の強化につながります。今回の協力合意に基づき、両国は観測ロケットによる研究活動の連携を図るとともに、機器やデータの交換、研究者の交流を進めることにしています。
2007年の基本合意書の調印後、アンドイヤから日本のロケットを、スヴァールバルからノルウェーのロケットがそれぞれ打ち上げられました。今後、2014年末までに4機のロケットを新たに打ち上げる計画です。このうち、特に重要なのは、2013年に予定されている2機で、ノルウェー北部にあるすべての宇宙研究関連施設を活用して、ノルウェーと日本のロケット各1機をアンドイヤから同時に打ち上げることになっています。
打ち上げの目的は、南北両極間の大気の世界的な循環についての知見を深めることにあります。これら大気領域の関連性に関する情報は未だ限られており、将来の気候モデルを考える上で非常に重要な意味を持っています。
さらに、宇宙天気に関する研究は、ノルウェーにとって実用的な観点からも経済的な観点からも関心の高い研究です。なぜなら、ノルウェーの北極地方は、GPS(全地球測位システム)およびとEU(欧州連合)各国が推進する「ガリレオ」衛星測位システムの対象地域の境界にあるからです。オーロラ(北極光)は衛星信号に干渉し、公海における衛星通信・航行システムに大きな問題を生じさせます。スヴァールバル上空におけるオーロラの電波信号に対する干渉状況の解明を図るため、日本はノルウェーのICI型ロケットに機器を提供することになっています。
ノルウェーと日本の大気研究関係者は明確な研究目標を共有しており、両者が協力することによってより複合的に対処する能力が生まれます。ノルウェーは北極とオーロラ発生地に近い位置にあり、研究インフラも充実しているため、上層大気の探査を進める上で有利な立場にあるとともに、日本をはじめとする各国にとって、研究協力のパートナーとして関心の高い存在になっています。
ノルウェー・日本の宇宙研究協力に関しては、ノルウェー宇宙センターとJAXAの間で一層強化されることが期待されています。
今年11月、ノルウェー・日本科学技術協力協定に基づく第3回合同委員会がオスロで開催される予定です。現在、同研究協力協定では、ナノテクノロジー、気候・環境、海産物の安全性の3分野に重点が置かれていますが、今回の会合で宇宙・大気研究を協力課題に組み入れるこを目指します。
写真: Norwegian Embassy Tokyo