【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 06】

「ナショナルーリストルートプロジェクト」に関する第2回めのレポートです。同プロジェクトのコンペに参加された様子をご報告頂きました。


 【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 06】
『ナショナル・ツーリスト・ルート・プロジェクト②』
山田良(建築家・札幌市立大)

前回「Detour/ナショナル・ツーリスト・ルート・プロジェクト」の中からひとつのプロジェクトについて設計担当者としてご紹介しました。勤務していたJensen & Skodvin 建築設計事務所では、当時いくつかの公共空間デザインのプロジェクトが進行していましたが、「これが"Detour”※1に属するもの、他のプロジェクトは…」という意識はありませんでした。
※1 Norsk Formが主催する、ナショナルツーリストルートの作品群を紹介するプロジェクト

ノルウェーの国全体に公共空間におけるデザイン性を求める意識が少しずつ高まっていて、設計者にとってもそれらの仕事が特別なチャンスということではなかったのかもしれません。完成したあと"Detour”作品集に掲載されているのを発見し、はじめてプロジェクト群のひとつであったことを知るほど。
そのうちひとつコンペ応募案についてご紹介します。

基本はチャンス共有:
コンペティションにより設計者が選ばれています
“Detour”すべてのプロジェクトではありませんが、その多くがコンペによって設計者・デザイナーが選定されています。インターナショナル・コンペによるもの、スカンジナビア諸国から集うものもあるようですが、この"Detour”そのものにノルウェーの若手建築家・デザイナー発掘というねらいもあり基本的には国内招待コンペに重きを置いているようです(※2


Detourプロジェクト群とNorskForm建築部門のディレクターNina Berre氏

僕から見ると、このようなすばらしい敷地に「展望所をつくって」などと依頼されたら、数か月その地域に住んで取り組んでしまうな~と思うほど本当にうらやましい限りなのですが、コンペとは別にそれらの機会をなるべく重複せず別の設計者に与えるというさらにすばらしいコンセプトもあるそうです。

ディレクターのNina氏へ「日本人建築家でも設計する機会をもらえそうですか?」とやんわり伺うと、少し言葉を選んで、「不可能ではありませんよ」とのことでした・・・。しばらくは難しいようです。
※2:Detourのプロジェクト・ディレクター/Nina Berre氏とのインタビュー(2007年9月)より

コンペに参加:
景勝地Trollstigenのプロジェクト・コンペティション

2005年秋、オフィスがTrollstigenのコンペに招待され僕が担当をすることになりました。景勝地として外国でも有名なTrollstigenにレストランやお土産店、ギャラリーなどの休憩複合施設を計画するもので、全体で5グループの設計者が招待されコンペに参加。日本でのそれと同じく現地説明会からはじまり、質問受付期間を経て最終提出というスケジュールでした。


Trollstigenプロジェクト・コンペの参加設計グループの現地説明会:現地の山小屋にてノルウェー政府担当者より説明会が行われた


Trollstigenプロジェクト・コンペの参加設計グループの現地説明会:敷地全体の見学会。筆者はほとんど観光気分です

ここで少しノルウェーでの建築実施コンペについて触れますと、提出形式はおおむね決まっていてA1パネル4枚+A3製本10~30冊というボリューム、もちろん匿名提出です。日本のコンペではある程度大きい規模の建築プロジェクトでないとA1サイズ複数枚という要求にはならないかと思いますが、ノルウェーでは実施前提となるとほとんどのコンペで4枚提出とされていました。

また付随して日本での応募に比べ苦労(アイデアレベルでなく)したのは、夜・週末はお休みになる印刷工程と郵送のスケジュール確認です。「~日必着」となればかなり神経質になり、何度も郵便局に電話をしたのを憶えています。この点での東京での各営業時間はすごいですよね(24時間!)。

コンペは結果からいいますと残念ながら最優秀を逃しました。実施招待コンペなので最優秀=設計者となりプロジェクト獲得できることになります。コンペについて触れる場合その多くが最優秀プロジェクト獲得案として紹介しますが、今回は特別に一提案としてお見せします。


Trollstigenプロジェクト・コンペの敷地全景:既存のお土産店と遊歩道。これらをリノベーションもしくは建て替えます


Jensen & Skodvin建築設計事務所の提案パネル:さまざまな用途のスペースが岩山内半地下に隠され配置されています Trollstigen Project: Jensen & Skodvin Arkitektkontor copyright: Jensen & Skodvin Arkitektkontor

僕らの提案は、そもそも募集要項をきちんと解読したような、していないような自由なものでした。ボスのヤン・オラフから「リョー、寿司バーを入れようか」との話でそのまま寿司バーが岩の洞窟に入っている、駐車場を池に浮かぶアイランドとして設定するなど山頂の景勝地でのプロジェクトとしては多少複雑なプログラムです。

しかしながら、とても自由で、「僕らのアイデアは今回のコンペを照準にしているというよりも、将来のどこかのプロジェクトのために温めてあります」という雰囲気のプレゼンテーションになりました(なってしまいました)。事実、このころオフィスではフィヨルド海岸沿いの小さい島をプライベート購入する、というまた全く別の素晴らしいアイデアと話題が頻出していて、ノルウェーの風景をどのような方法を用いれば最も深く味わうことができるのか!と楽しく話をしていました。

"Detour”へのアイデアは生活内での着想であるほど、外国からの旅行者には新鮮で快適に写るのだと思いますし、それが実践されているからプロジェクトの大小に関わらず物語性を持った新しい場を感じさせるのでしょう。

(テキスト・写真 山田良 やまだりょう)


【ノルウェー現代建築デザインをめぐる】は月に一度の掲載を予定しています。
筆者の山田良氏は、2003から2006年まで文化庁派遣芸術家研修員としてオスロに滞在。Jensen & Skodvin 建築設計事務所に勤務されるとともにオスロ建築デザイン大学(AHO)の建築デザインコース講師を務められました。現札幌市立大学デザイン学部空間デザインコース専任講師。

 


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