【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 07】

ノルウェーでは建築・デザインの情報をどのように入手しているのでしょうか。建築家・山田良氏による連載寄稿第7回は、「現代建築とノルウェーのメディア」についてのレポートです。


 【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 07】
『現代建築とノルウェーのメディア』

山田良(建築家・札幌市立大)

現代建築デザインとそれを発表するメディアはいろいろな意味で重要なつながりをもっています。日本では有名な建築デザイン誌やギャラリーでの展覧会、企業主催のレクチャーなどを通して多くの若い建築家や学生が情報を得ていると思います。ノルウェーでも同じく建築家を目指す若者が「最近は建築の社会でなにが起きているのだろうか」とチェックするフィールドが多数あります。

ちなみにここでいうメディアとは、情報配信を主な目的としている団体だけでなくギャラリーや学会、学術機関も含んでいます。もちろん後者は学術的に建築学や建築のデザインをとらえていますが、それらの評価を受けた上で建築家の作品を発表できることは、ある意味大変しっかりした裏付けとなるわけで、日本、ノルウェーを問わず建築家やデザイナーにとって重要な機会ともなっています。

共通言語としての英語
ノルウェーの…とはいいながらも、ほとんどのノルウェーの人々は英語ができます。つまりどこの国の雑誌やメディアなのかをはじめからそれほど気にしなくてよい(気にならない)こと現地で見ていて遅ればせながら気付きました。大変うらやましい状況です。世界のあらゆるメディアには英訳が付属していますから、内容が全くつかめないということが少ないようです。

「a + u」
そのなかでも建築デザインのメディアとして最も人気がありステータスの高い媒体は、実は日本の「a + u:エーアンドユー(新建築社発行)」でした。ヨーロッパを旅行し書店に立ち寄ると「a + u」はよく建築デザインのコーナーで見かけますが、ことノルウェーでは「ここに掲載されると有名な建築家のメンバーだぞ」と友人の建築家の間でも話題となることがよくありました。写真のクオリティも高く、また何よりも遠い日本からフォーカスされたということで「この建築デザイン、建築家は相当なものだ」と位置づけられるようです。僕も日本人として鼻が高い思いをしたものです。



ノルウェーの建築デザイン雑誌
「arkitektnytt」
ノルウェーを代表する建築デザイン誌。若手建築家を紹介する特集も多かったのですが、一つの現代建築新作を取り上げ、建築家のコメントやクライアントのインタビュー、街の人々の評判なども加えじっくりと紹介する編集が印象的です。編集部のEinar氏によると「最新作の写真掲載というよりも、完成後すこし時間をおいてそのプロジェクトの評判や利用者の感想などを含めながら紹介したい」ということです。「建築ニュース」というタイトルとはいえ、完成後の評価も盛り込み反映させるクオリティの高い建築デザイン誌です。

「ARKITEKTUR N」
ノルウェーの動向に焦点をしぼった建築雑誌。こちらもおもに建築デザイン新作や建築家の活動を紹介しています。学術的に取り上げる記事もあり、上記arkitektnyttに比較すると学会誌のデザイン紹介編といったところでしょうか。近年は国全体の建築ラッシュにあわせて大規模プロジェクトや大規模なコンペの結果発表など華やかな誌面も印象的です。少々細かいのですが全ページをカラーとしているのも実はノルウェーの建築系雑誌としては比較的めずらしく、その紙質のためか持ったときのズッシリ感が好印象です。



ノルウェーの建築デザイン紹介に関わる学術機関

「Norske arkitekters landsforbund」

ノルウェー建築家協会です。日本の(社)建築学会に近い役割を担っていますが、デザイン部門に特化しています(ノルウェーの建築業界ではまずデザイナーとエンジニアに大きく部門が分かれるため)。ギャラリーと付属の図書館はとても素敵な場所で、世界中の建築デザイン雑誌が並んでいました。レクチャーも頻繁に開催していて、ヨーロッパ諸国の建築家を招待することも多いです。その他自らの雑誌発行やコンペの紹介、学生プログラムなども企画・運営しています。
Norske arkitekters landsforbund


「NORSK FORM」
NorskForm
プロダクト・建築・ランドスケープデザインに関する文化省のイニシアティヴで設立された組織です。Jensen & Skodvin設計事務所(僕が所属した事務所)でデザインした古い工場を改装したオフィスとギャラリーが話題となりました。前述のNorske arkitekters landsforbundと異なり、ファッション、家具、プロダクト製品などと建築デザインが同時に作品紹介展示されたり、各分野のデザイナーがレクチャーを連続的に行うなどのことから若者にとても人気の施設です。Norsk Formの巡回展「Extreme North」が、2005年に新宿・OZONEギャラリーでも開催されたことをご存じの方もいるかもしれません。


ギャラリーと美術館
「Nasjonalmuseet for Kunst, Arkitektur, og Design」

最後に建築デザイン展を主にあつかうギャラリーをご紹介します。国立美術館/アート・建築・デザインです。ここは2004年に3種の美術館が組織統合してできたものです。統合したおかげで案内やパンフレットなども整備され、旅行者にとってはとても分かり易く「一日アートめぐり」ができるなど評判のようです。
建築部門ではつい最近、建築家S.フェーン氏設計によるギャラリー新館がオープンし話題になっています。噂では東京でも建築美術館をつくろうという動きがあるようですが、この国立美術館/建築に出向くとノルウェーの建築の歴史と現代デザインの動向をとても親しみ易く見学することができます。やはり日本にも建築の美術館が必要だと感じます。
Nasjonalmuseet Arkitektur

「rom: Kunst + Arkitektur」
建築デザイン展と建築インスタレーション展をメインに開催するアートギャラリーです。規模としては比較的小さいのですがとても雰囲気がよく、100年ほど経ったコンクリートの建物を改装し2005年にオープンしました。
若手建築家や建築の学生がインスタレーションアートをつくるなど、新人発掘や他の大きな美術館ではとりあげにくい実験的な空間作品を展開しています。昨年秋にはフィンランドの建築家S.リンターラ氏が屋外テラスに小建築作品を自ら建設し、多くの来館者がおとずれていました。ディレクターのクリスチャン氏とも相談し、今後なにか作品展示ができたらと考えています。


(テキスト・写真 山田良 やまだりょう)


【ノルウェー現代建築デザインをめぐる】は月に一度の掲載を予定しています。
筆者の山田良氏は、2003から2006年まで文化庁派遣芸術家研修員としてオスロに滞在。Jensen & Skodvin 建築設計事務所に勤務されるとともにオスロ建築デザイン大学(AHO)の建築デザインコース講師を務められました。現札幌市立大学デザイン学部空間デザインコース専任講師。


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