【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 08】

デザインに大きく影響する「ディテール」の観点から、ノルウェー現代建築について考察いただきました。


【ノルウェー現代建築デザインをめぐる No. 08】

『ノルウェーの現代建築とディテール』

山田良(建築家・札幌市立大)

建築の仕事に関わる人であればさまざまな部類の「ディテール」に関心を持つことと思います。日本の現代建築作品は外国でも参照されることの多い、大変精緻でまた見た目にも美しいディテールを持っています。むしろ建物の美しくシャープな印象は精緻なディテールにより支えられている、と言いかえることもできるでしょう。

日本と同じく、建物にとって気候条件の厳しいノルウェーにおいて開口部や断熱壁のディテールは、建築家のデザインに影響を強く与えるものです。南ヨーロッパ諸国に比べ降雨量も多く湿度が高いため、明るく開放的な空間にする上では窓ガラスまわりのデザインに工夫が必要です。それらのあまりフォーカスされない視点からレポートしてみようと思います。

「1/100と1/10」
イェンセン&スコドヴィン建築設計事務所※では、一般的な縮尺の図面(1/100)と部分詳細の図面(1/10)を全図面にてリンクさせて作図していました。つまり、コンピュータで製図している大きな建物全体が入っている図面を書いているときも、窓枠やガラスの厚さを確認できるようになっている、ということです。

この「全体」と「部分」を同時進行でスタディし製図することがとても印象的でした。日本の設計事務所では、方法は違っても全体と部分を詳細に検討・デザインしていくと思いますが、ノルウェーにおいても行なわれ、むしろ作業上機能的に進められていること新鮮に感じました。

ちなみに事務所の作業分担は良い意味で決まっておらず、全体の製図をした以外のスタッフが図面にアクセスし、詳細(ディテール)を書きこみ提案する、もしくは始めに詳細を書いておいて全体に生かせないかを問う、という場面もありました。

ファイル管理の方法などは省きますが、スタッフ誰でも図面に手を加え、デザインの全体と詳細を同時に進めるというシステムで互いの研修にもなっているな、と思ったこと憶えています。
※筆者は2003-2006のあいだシビルアーキテクトとして勤務

Ferry Terminal 全体図と部分詳細図がリンクしているイメージ図(Ropeid Ferry Terminal 出典:a+u 0412 新建築社)

 

「ごついシャープさ」
建築デザインの洗練された印象を表す場合、「シャープ」「シンプル」「軽いもしくは薄い」といった表現で軽快かつ繊細であることを伝えようとするのが一般的だと思います。
とかくディテールの部分で工夫を凝らした建築作品に至っては、こうした表現が当てはまりやすいことは、いろいろな意味で無駄のないギリギリな範囲での解決として自然なことです。

ノルウェーの実務の中で感じたことはこれとは少し違い、「分厚く質実剛健」なディテールでした。
素材感を大切にし、着色も最小限でおさえることは日本の現代建築デザインとも多分に通じていて、僕なりにはとてもしっくりと馴染むものでした。しかしながら耐久性に関わる部位でのサイズの決め方などは堅実であり、それをうまくデザインとしてもしくはデザイナーの意志によるものとして見せようとしていたものです。

いま僕は札幌を拠点に活動していますが、この「耐久性とデザインの融合」について考えるとき、最近よくふと事務所での仕事を思い出します。

柱と床のディテール:敷地にある岩山の頂上を残たすめ、鉄骨の柱が斜めに傾く(Mortensrud Church)

 

ガラス接合ブラケットのディテール:鉄骨の柱とガラスサッシュをねじれたブラケット(鉄板)でとめている。いたってシンプルかつ合理的ながら繊細さも醸し出している。(Mortensrud Church)

 

階段手すりのディテール:巾約15cmのC型鋼材を手すりに使用。橋のような頑強さだが、既存建物(工場)とてもバランスのとれたデザイン(Norsk Form)

(テキスト・写真 山田良 やまだりょう)


【ノルウェー現代建築デザインをめぐる】は、2003から2006年まで文化庁派遣芸術家研修員としてオスロに滞在された山田良氏による寄稿連載です。Jensen & Skodvin 建築設計事務所に勤務されるとともにオスロ建築デザイン大学(AHO)の建築デザインコース講師を務められました。現札幌市立大学デザイン学部空間デザインコース専任講師。


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