ノルウェーの味覚 -Taste of Norway-

最終更新日: 16.10.2014 // 雄大な地形、厳しい気候、のしかかる大自然に立ち向かう小さな人間・・・。多くの観光客がノルウェーを訪れて出会う印象的な風景です。ノルウェーは約500万人の人口が日本とほぼ同じ面積の国土に分布しており、ノルウェー国内のどこへ行っても自然が損なわれることなく環境が保たれています。伝統的なノルウェー料理の基本となる大切な食材は、こうした風土や大地に育まれます。

長い複雑な海岸線に面する沿岸地方には、天然魚、養殖魚のどちらをも育む豊富な水をたたえています。スカンジナビアの夏には、白夜の太陽の下で食物はすべてゆっくりと熟成します。ベリー、果物、野菜と、それぞれ特別な香りがあります。水分を多く含んだ牧草を食んだ動物の肉は、他では味わえない風味があります。

ストックフィッシュとルーテフィスク
ノルウェー最北の沿岸地方では古くから、タラを寒風にあて干物にしています。タラには塩をせず、そのまま竿に吊るします。これは、ノルウェーの産物として1千年以上もヨーロッパに輸出されてきました。そして、その代わりに貴重なワイン、小麦、蜂蜜などの食材が入ってきました。現在では世界中で親しまれているノルウェーサーモンも、干しダラの歴史と比べれば輸出の歴史は大変浅いものと言えるでしょう。

干しダラは「ストックフィッシュ」と呼ばれ、stoccafisso、estocafixなどと様々に記述されてきました。1393年に記された料理本には、「ボイルしたstofix」を、マスタードやバターを添えていかに食べるべきかが書かれています。まず木製の木槌でこの干し魚をよく叩き、それから何時間もかけて水で戻します。木で作った灰を戻し水に足すことで魚の身が特別やわらかくなり風味がつきます。これが、ノルウェーやスウェーデン、そして両国からの移民が多いアメリカの一部でよく知られる「ルーテ(灰汁)フィスク(魚)」の調理法です。

ラットブレッドと野菜
スカンジナビア特有の、パリッと乾燥した堅く薄いパンはフラットブレッドと呼ばれ、ノルウェーではスープや干し肉と共に食べられます。ノルウェーの野菜、果物、ベリー類、なかでも白菜、りんご、さくらんぼ、イチゴなどは品質が良いことから、今日海外からの需要も大変高い食材です。ノルウェーで育つ根菜は昔から味が良いとされています。

サーモンとバカラオ
マスやサーモンはしばしばノルウェーの家庭の食卓に上ります。これらの新鮮な魚は様々な方法で調理されますが、多くの場合ボイルして食べます。この他、人気がある魚はタラです。昔の人々は、タラを干したもの(ストックフィッシュ)や塩漬けの干し魚(クリップフィッシュ)を食べ慣れていました。

クリップフィッシュは、ポルトガル、イタリア、スペイン、南米、カリブ諸国に輸出され、「バカラオ」と呼ばれて各国で独自の調理方法で食べられています。かつては、ゆでたクリップフィッシュをジャガイモの付け合せで食べるのが一般的だったノルウェーにも、海外から異なるレシピが紹介されるようになりました。

今日レストランのメニューには豊富な種類の魚がみられます。なかには見た目にグロテスクな魚もいますが味は一級品として知られています。オオカミウオやイワカゲと呼ばれる魚はその一例です。何百年ものあいだ漁師が目もくれず海に投げ返していた魚の美味しさが知られるようになりました。

乳製品
ノルウェーで古くからあるデザートにはミルクが用いられています。ゴンメ(gomme)もそのひとつです。甘く濃厚なサワークリームのお粥ロンメグロート(rømmegrøt)は伝統的な食べ物で、伝統的に結婚式や出産祝いなど特別な日や夏のランチに出されました。フラット・ブレッドや塩漬けのドライ・ミートが添えられます。

ガンメルウスト(gammelost)は、チーズ製造に通常使うレンネットを加えずに牛乳を沸騰させて造るサワー・ミルクのチーズです。
ヤイトゥスト(geitost - ブラウンチーズ) は、ノルウェー独特のヤギのチーズです。キャラメル色のほんのり甘いこのチーズは、サンドイッチの具としてよく使われます。

その昔、酸っぱくなったミルクは、大麦やオート麦など穀類で作る常食の粥に入れました。また、シチューにもミルクが使われました。全国どこでも手に入るミルクはノルウェー料理には欠かせないものでした。物々交換の時代、バターはノルウェー物産のなかで最も高価な品でした。高級食材のバターは、結婚式の装飾品として大きなピラミッド型に抜いてテーブルに飾られることもありました。民族博物館には、工芸品のひとつとして手作りのバター用木型が展示されています。

塩漬けの肉類
冬の長いノルウェーでは、家畜を牧草地に出せるのは短い夏の数ヶ月に限られるため、他の諸国と比べ状況は厳しいものでした。そのため、ノルウェーの人々は肉の干物や燻製、塩漬け、ピクルスなどに極端に頼らざるを得ませんでした。新鮮な肉は貴重な贅沢品でした。塩漬けの肉やソーセージなども、ノルウェーはスペインなどに比べ種類も豊富ではないものの、羊のモモ肉を塩漬けにしたフェナロー(fenalår)などはノルウェーの特産物です。
夏の香りの良い牧草を食んで風味豊かになった子羊の肉は、ローストのほかさまざまな調理法で食されます。最上級の肉は一般大衆には手の届かないものでしたが、新鮮なマトンは安価な肉として用いられていました。秋の屠畜期に手に入れることのできる、脂ののったマトンをキャベツと一緒に煮込んだ料理が、代表的な伝統料理フォーリコール(fårikål)です。

一方、塩漬けの子羊のリブ、ピンネ・ヒョット(pinnekjøtt)は、もともと西ノルウェー地方に特有の料理でしたが、現在では国を代表するクリスマス料理のメニューとして広く親しまれています。これにはコールラビ(kålrabi)というカブの一種の野菜をマッシュしたものが添えられます。

クリスマス料理
伝統的なクリスマス・ディナーは、東ノルウェー地方ではロースト・ポーク・リブ、沿岸地方ではタラかオヒョウ、ルーテ・フィスクといったように、各地方ごとに特色があるものでしたが、現在では地方色は薄くなってきました。お米とミルクで作った昔ながらのライス・ポリッジは今でも食されますが、クリスマス・ディナーに必ず並べられるメニューではなくなりました。これまで他国ほど一般的ではなかった七面鳥を好む人々も次第に増えてきています。

リスマスの料理としては、バラエティーに富んだ塩味の珍味やお菓子があります。スィルテ(sylte)はドイツ風に調理されたブタの頭で作ったパテ、子羊肉を使ったフォーレルル(fårerull)。その他、子羊のモモ肉の燻製、ニシンのマリネ、ポーク・ソーセージ、ミートボールなど。最近ではルーテ・フィスクもクリスマスのご馳走として使われるようになりました。

ノルウェーではクリスマスのお祝いに複数の種類のビスケットやクッキーを用意しますが、伝統的には7種類を作るとされてきました。また、デザートのケーキとコーヒーも欠かすことは出来ません。スポンジケーキにジャムをはさみ、クリームでデコレーションを施したブルートカーケ(bløtkake)やアーモンド・マカロンをサイズの違うリング状に焼きピラミッドのように積み上げたクランセカーケ(kransekake)などがあります。

飲みもの
現在では、ノルウェー人の多くがコーヒーを好んで飲みます。人口の9割が田舎に住んでいた19世紀の頃の日常の飲みものは、ブランネ(blande)という水と酸味のある乳清をミックスしたものでした。コーヒーが飲まれる前から、ビールを飲む習慣はあり、ヴァイキング以来自家製造のビールが飲まれていました。

葡萄の栽培は、北国のノルウェーでは難しく、ワインは輸入されています。ノルウェーで生産される酒の代表的なものにアクアヴィット(akevitt)があります。ジャガイモを蒸留した強い酒で、キャラウェイで風味がつけてあります。ルーテ・フィスクやフォーリコール、その他の塩漬けや燻製の料理とアクアヴィットとビールは伝統的な取り合わせです。リニエ・アクアヴィットは、樽に入れたアクアヴィットを船に載せてオーストラリアまで旅をさせたものです。リニエは「線」の意味で、赤道を通過させ波に揺られていっそう酒の風味がよくなったと言われています。

食の国際化
歴史的にノルウェーでは贅沢な料理を創造する必要のある貴族階級やブルジョア階級が存在しませんでした。またホテル以外にレストランの古い伝統もありませんでした。
人々が海外へ出かける機会が増え、外国の料理に触れる機会も多くなりました。また、ノルウェーへ移民した人々が店を開き、世界各国の食材が手に入り易くなり、ノルウェー料理も多様化しています。

国際化の波は、ノルウェーの食文化にもおよんでいます。他の西欧諸国と同様、ファーストフードや国際的チェーンレストランが多く出店しています。町で寿司屋を見かけることも珍しくありません。スーパーの食料品売り場には、電子レンジに入れるだけで完成する調理済みの食料品が並びます。

流行のファーストフードに対抗して、伝統的料理に戻ろうとする動きも見られます。いわゆる「おばあちゃんのレシピ」を見直そうという運動で、魚を発酵させたラークフィスク(rakfisk)、サワークリームのチーズ ガンメルゥスト(gammelost)、塩漬けの子羊肉ピンネヒョット(pinnekjøtt)などが人気を回復しました。

現在では、若いノルウェー人シェフが国際的な料理コンテストに積極的に参加し優秀な成績をおさめています。これらのシェフは、ノルウェーの伝統料理にも注目し、フランス料理の技術を用いてノルウェーの食材が光るメニューを考案し、第一線で活躍しています。


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