写真: Toru Fujishima.写真: Toru Fujishima

リドゥリドゥ・フェスティバル

最終更新日: 07.07.2014 // 北ノルウェーのManndalen(マンダーレン)で毎年7月に開催されるRiddu Riddu Festival(リドゥリドゥ・フェスティバル)は、先住民族の芸術文化を発信し交流を図る、世界でも最大規模のフェスティバルです。


サーミを蔑視する風潮がまだ色濃く残っていた1990年代初めに、若者たちを中心にサーミの言葉、文化、アイデンティティを取り戻そうとする運動が高まり、1991年にこのフェスティバルが立ち上げられました。以来23年にわたり、リドゥリドゥは徐々に規模を広げ、サーミのみならず世界の先住民族の芸術文化を紹介するとともに、共通の課題に目をむけ交流する場として成長してきました。知名度も上がり、2009年には、ノルウェー本国のなかで最も重要なフェスティバルのひとつとして認定されました。音楽パフォーマンスが中心ですが、アート、映画、演劇、舞踊、文学など100に及ぶ多角的なプログラムが用意され、子どもたちに先住民の歴史や言葉を教えるワークショップも開かれるなど教育関連のイベントにも力を入れています。

近年サーミとアイヌの交流がさかんになり、昨年はアイヌのアーチストであるOKIとマレウレウがリドゥリドゥ・フェスティバルのメインゲストとして参加しました。今年も引き続きアイヌの八谷麻衣さん(マレウレウ)が参加し、アイヌの伝統儀式などを紹介します(フェスティバル期間:7月9日から13日まで)

2013年のフェスティバルに参加された小巌仰さんと藤嶋亨さんが、下記の通り感想を寄せてくださいました。

 
 
 
 

photos by Toru Fujishima 


寄稿「日々を生きる力を、音楽に託して」~Riddu Riddu 2013に参加して

 2013年7月、世界の先住民族出身の音楽家たちが集う国際音楽祭「Riddu Riddu 2013」がノルウェーで開かれた。独自の文化や言語、生活習慣を守り、さまざまな困難に立ち向かってきた民族の思いを代弁するかのように、参加アーティストが熱いパフォーマンスを披露。それは、地域や人種の違いを越えた普遍的なもので、日々を生きる勇気を多くの人に与える力強さにあふれていた。

◆共通の問題を一緒に考える

 「原子力によって多くの子供が苦しんでいる現実を知ってほしい」。アイヌの血を引く音楽家OKI(オキ)さんは、レゲエのリズムに合わせて、アイヌの伝統的な弦楽器「トンコリ」をかき鳴らし、こう訴えた。今年、フェスティバルのメインゲストの1人として、OKIさんは招待され、アイヌ民族の歌や踊り、儀式を紹介するワークショップや、アイヌ民族を題材にした映画の上映会など、関連の催しが数多く開かれた。OKIさんが出演するのは、6年前に続いて2回目。前回と比べて、ステージに臨むスタンスは大きく変わったという。

 「東日本大震災を経験して、アイヌの問題は吹き飛んだ。むしろ福島が打ち捨てられていくのを見ると、数百年前にアイヌがやられたことと同じことが福島で繰り返されていると感じる。これは悲しいことだが、今は共通の問題をみんなで一緒に考えることが一番大事だ」

 1991年に北欧の先住民族「サーミ」の若者グループが立ち上げ、今年で22回目。今回、北欧やカナダ、ニュージーランド、ロシアなど世界各地から約20組のアーティストが参加し、伝統音楽だけでなく、民族色を反映したロックやヒップホップなど、多彩な音楽を披露して会場を盛り上げた。夜のコンサートのほか、昼間はそれぞれの民族の音楽や踊り、伝統工芸、食生活などを紹介するプログラムが多数用意されている。出演アーティストが民族への思いや自身の経験を語るセミナーも公開された。

また、幅広い世代に働きかけをしようと、会期中、教育関連の事業にも力を入れる。世界各地から先住民の青少年を招き、サーミの同世代の若者とともに相互の文化を学んだり、先住民政策について意見を交わしたりする取り組みを実施。さらに、小さい子ども向けには、遊びやゲームを通して、サーミが生業としてきた放牧に触れたり、アイヌ伝統の歌や踊りをアイヌの人々と一緒に楽しむ体験講座が開かれたりした。

ロシアの遊牧民・トゥバ民族出身で、「喉歌(のどうた)」の歌手として世界的に活躍するラジク・テュリュシさんは「出演する音楽家にとって、それぞれの民族の文化や音楽を知ってもらう良い機会になるし、ここに来る聴衆は別の文化を発見することになる。目を開き、心を解き放ち、魂を磨くような新しい経験ができる場所だ」と、フェスティバルを評価する。

◆フェスティバルが、変化をもたらす

「Riddu Riddu」は、サーミ語で「海岸沿いの小さな嵐」を意味し、元々は民族の問題やあるべき姿を話し合ったり、アイデンティティーを確立したりする集会として始まった。会場は、ノルウェー北部のマンダーレンという小さな村。サーミの人々が多く住む一方、1800年代半ばから長く続いた、サーミ語の使用禁止や、土地所有、移動の制限などによる政府の「ノルウェー化政策」が浸透した地域でもあった。ノルウェー語を話す人に土地所有の優先権が与えられたため、夫婦間でもサーミだと認める人とそうでない人との立場の違いが生じたり、地域住民の間でも対立が起こったりしたという。

フェスティバル会場では、民族衣装を身に着けた多くの地元住民が、ボランティアとして働いていた。一方で、フェスティバル参加者でもあるため、ボランティアの仕事はパートタイムで役割が分担されており、仕事がない時間帯は歌ったり、踊ったりしながら心から音楽を楽しんでいる姿があちこちで見られた。今、フェスティバルの成功が、地域に与える影響は大きく、変化も起きているそうだ。若い女性ボランティアのサンドラ・マリア・ウエストさんは「このフェスティバルを通じて、民族の復興が進んだ。今、サーミの言語や文化を学ぶ若者も増えている。困難な歴史があったけれども、『Riddu Riddu』はサーミの誇りになっている」と胸を張る。

◆手を取り合い、歌い踊る

会場は、氷河の浸食作用によって削られたフィヨルドの山々に囲まれている。ステージの近くには清流が流れ、さわやかな風が吹き抜ける。会場内のテントエリアでキャンプしながら5日間のフェスティバルを楽しむ人も多かった。3日目の夜のコンサート。サーメの伝統音楽で、無伴奏の即興歌「ヨイク」を歌うステージが進行している時、聴衆が自然に手を取り合い、二重三重の大きな輪ができて、踊りが始まった。人種や言葉の違いを超えて、参加者が一緒に楽しむ姿は、フェスティバルを象徴する場面だった。

フェスティバルのディレクター、リタ・ミエンナさんは「同じようなバックグラウンドを持った人たちと、お互いに話をするととても感動する。私たちにとってフェスティバルは力を得る場所です」と話す。ノルウェーの豊かな自然と、先住民族をルーツに持つアーティストたちの熱いパフォーマンス、会場に集まった人々の楽しそうな笑顔。白夜の空の下で、その3つの要素が化学反応を起こし、多くの人に日々生きる力をもたらした。そんな思いを強くさせるフェスティバルだった。

 取材 :小巌 仰(Harmony Fields) / 藤嶋 亨

 

 


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