【スキーを楽しむポースケ休暇③】

最終更新日: 03.09.2009 // 「週末や休暇をヒュッテ(キャビン)で過ごす」 - ノルウェー人がこう話すのをしばしば耳にします。望月隆氏によるスキー休暇レポート第3回目の今回は、ヒュッテの生活の様子を紹介していただきました。


ご存知の方も多いかと思いますが、ノルウェー人にとってヒュッテ(山小屋・別荘)はとても大切な場所です。ただ「別荘」という日本語ではうまく言い表せない特別の意味がある存在かもしれません。それは忙しい日々から離れて静かな時間を過ごすため、自然を身近に感じるため、そして文明社会の刺激から身を隠す意味があるように思います。

ノルウェーでは、かなり多くの人がこのヒュッテを所有しているようです。もし自分で所有していなくても、親類の誰かが持っているとか知人のヒュッテを借りるなど、それぞれがどこかに普段の生活から離れる場所を持っているようです。

私の友人のオイビンとランディのヒュッテをご紹介しましょう。10年程前に古いヒュッテが火事で消失し、その後新しく建て直したもので標準的な大きさ(約55平米)のようです。


第1回目にお話しましたように、冬は雪が積もっていて車で入る事はできませんが、夏になると車でヒュッテまで入る事ができます。もちろん多少の苦労はいとわず、できるだけ普段の生活から遠ざかるという基本的な考えがありますので、電気も水道も来ていません。キッチンで使うガスボンベ以外は水も薪もさらに電気まで現地調達です。この点で、ヒュッテでの生活はかなりエコと言えそうです。
現地調達の電気はヒュッテの外壁に取り付けた太陽光発電のソーラーパネルから得ています。このパネルから、発電された12Vの電気がバッテリーに蓄電される仕組みになっています。蓄えられた電気で室内の電灯とラジオをつけ、シャワーのためのポンプが回るようになっています。



スキーツアーをしてくると汗をかく事もありますが、こんな時暖かいシャワーはたいへんありがたいもの。薪ストーブで暖めたお湯をバケツに1杯くんでシャワーのポンプの吸い込み口をバケツに入れて、電原オンでシャワーからお湯が出ます。ただし注意しなければならない事は、バケツ1杯のシャワーのお湯で頭から身体全部を洗わないといけないという事です。洗っている途中でお湯が無くなると大変な事になりますね。必然的にお湯を節約する事が身に付きます。私も最初は途中で外をのぞきながらシャワーを浴びていました。

キッチンはガスが主役です。コンロ、オーブンは当たり前ですが、冷蔵庫までプロパンガスで動きます。水道はありませんから水は自分たちで沢の水を汲んで使います。冬がやっと明けそうなこの時期は沢までの雪を掘るのが一苦労です。年によっては数メートルも掘らないと水が出てこなかったり、凍っていたりするそうです。もちろん、水は一度煮沸してから飲み水にしています。

最近は電気や水道をひき、広いヒュッテでもっと快適に過ごそうという人々が多いという話を聞きました。ちょっと本質から離れているようですが、それも時代の変化なのでしょうか。

ヒュッテでの生活は必要な物だけあれば良いということを、少しの間だけでも思い出させてくれます。刺激の多い普段の生活から五感を開放してくれるようです。数日間ヒュッテで静かな時を過ごしながらのスキーツアーは、より自然との一体感をもたらしてくれました。ヒュッテでの生活をそのまま日本に持ってくる事はできませんが、毎日刺激の多い私たちにも大切な事のように思います。

彼らのヒュッテの名前はKRYPILY。自分たちのヒュッテに名前を付けている人も多いようです。

次回はいよいよ帰路につきます。日本も今年のGWは高速道路の渋滞が話題になりましたが、ノルウェーのイースターはどうだったでしょうか。

【テキスト・写真  望月隆(もちづき たかし)】



望月隆(もちづき たかし)
テレマークスキーヤー。
1997年ノルウェーでノルウェースキースクール(Den Norske Skiskole)のテレマークスキーインストラクターの資格を取得。
現在は長野県峰の原高原でT.M.N.スキースクールを主宰しテレマークスキーの指導にあたる。
著書(共著)に「日本テレマークスキー教程」「テレマークスキーレッスン」ほか。

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