ノルウェーのストリートアートシーン -DOLKを中心に-

最終更新日: 17.02.2014 // 2013年夏ベルゲンで開催されたDOLKの個展に参加されたGypsey Eyesの山本誠剛さんがノルウェーのストリートアートシーンに関する報告を寄せてくださいました。



今回は、2008年にスタヴァンゲルで開催されたストリート・アート・フェスティバル«NuArt» に続く2度目の訪問となりました。最初に訪れたベルゲンはDOLKの生まれ故郷でもあり、ノルウェーのストリートアートの発祥地として最も盛り上がりを見せている町です。

日本から16時間かけてベルゲンに到着。空港ではDOLKが出迎えてくれました。車窓から見るベルゲンは、落ち着いた静かな町という印象でしたが、市内に入るとぽつぽつとグラフィティが目に付くようになりました。DOLKを含め有名作家の作品も見られ、いよいよストリートアートシーンの本拠地に来たという感慨が湧いてきました。

滞在したホテルScandic Bergen Cityのすぐ近くにも高さ15メートルのリーガルウォール(アートのためオーナーから許可を得たビルの壁)があったり(写真1)、少し歩けばDOLKの古い作品に行き当たったり(写真2)、ストリートアートが日常風景に溶け込んでいる印象がありました。(写真2注:この作品は後日盗まれてしまい、もう見ることはできません)

写真1(上):リーガルウォール   写真2(下)DOLKの古い作品に遭遇写真1(上):リーガルウォール   写真2(下)DOLKの古い作品に遭遇

ベルゲンの中心地といえば、世界遺産にも登録されている波止場の木造建築ブリッゲンが有名ですが、小高い丘を背景に建造物が立ち並ぶ風景は本当に美しく、DOLKの素晴らしい作品制作の原点がこの町にあることを改めて実感しました。

世界遺産ブリッゲンで知られる港町ベルゲン世界遺産ブリッゲンで知られる港町ベルゲン
 

DOLKの個展はベルゲン市内にあるGalleri s.e というギャラリーで行なわれました。8月30日の初日から大盛況で、会場に入りきれないほどの人々で賑わっていました。年齢層は幅広く、数百万円もする展示作品のほとんどが開催直後に次々に売れていました。キュレーターに話をきいたところ、ここ1年で若いコレクターが急に増え、またもとは現代アートをコレクトしていた人々が、ストリートアートに注目し始めたとのことでした。15年のギャラリー史上最も成功した個展となったそうで、ストリートアートシーンの盛り上がりと将来性を肌で感じたと共に、その中でDOLKが引き続きキーマンとなることも確信しました。

ベルゲンのGalleri s.eで行なわれたDOLKの個展会場風景と作品(写真:上・中・下)ベルゲンのGalleri s.eで行なわれたDOLKの個展会場風景と作品(写真:上・中・下)
 

ベルゲンでDOLK個展を堪能した後、オスロに移動しました。オスロの町並みはベルゲンと打って変わり、近代的な高層ビルが立ち並ぶ「都会」でした。オスロでもここ数年ほどDOLKらの影響を受けた若いアーティストが育ってきてはいますが、町のなかで彼らの作品を目にすることは滅多にありません。オスロには東京など他の大都市と同じく「タギング」と呼ばれる80年代のアメリカのようなグラフィティが目立ち、少し残念に思いました。

オスロの街角オスロの街角
 

嬉しい驚きだったのは、オスロのセントラルステーションでPobelの作品を目にしたことです。PobelはDOLKと同時期に活動を始めたノルウェーのアーティストで、DOLKが所属するHandmadepostersの初期メンバーでもあります。後にPobel本人に会い、話をきいたところ、セントラルステーションの作品はDOLKと共に行なった駅の広告プロジェクトの一環で、通常オスロで許可をとってストリートに作品を残すのはかなり難しい状況とのことでした。作品を残せるのはDOLKのような有名で実績のあるアーティストに限られており、若手はスタヴァンゲルで開催されるNuArtのリーガルウォールに描きに行くしか活動の場所が無いとのことで、ベルゲンとオスロの大きな違いを感じました。

Pobelの作品(オスロ中央駅)Pobelの作品(オスロ中央駅)
 

今回ベルゲンを訪問して、ベルゲンの町のストリートアートに対する取り組み方が、伝説的アーティストBanksyの出身地でイギリスのアートシーンの聖地とも呼ばれるブリストルに似ているという印象を受けました。今後もノルウェーの次世代のアートシーンにおいてベルゲンが最も重要で注目すべき町であることは疑いようがありません。

メルボルンで始まりブリストルで開花したストリートアートブームが、今後ベルゲンでさらに進化していく兆しをはっきりと感じた訪問となりました。

テキスト・写真:山本誠剛(Gypsey Eyes



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